日本全国の通常の学級では、目の前の子どもたちのために、楽しく「わかる・できる」授業をつくりたいと、どの教師も、日々努力しています。
しかし、文部科学省の調査でも明らかになったように、どの学級にも、発達障害の可能性がある子がいると言われています。学力が劣りがちな子もいます。
こうした特別な支援が必要な子を含めて、通常学級の授業を進めることが、すべての教師が取り組むべき切実な課題になっています。
授業のユニバーサルデザイン(以下授業UDとする)とは「特別な支援が必要な子を含めて、通常学級の全員の子が、楽しく学び合い『わかる・できる』ことを目指す授業デザイン」です。
ご存じのように、ユニバーサルデザインとは、建築物や製品のデザインから生まれた考え方ですが、それを授業づくりの考え方にも生かすというものです。
例えば、階段のスロープ、水道の蛇口などのユニバーサルデザインの例からもわかるように、特別な支援が必要な子のつまずきを想定した上での授業の工夫は、学級の他の子にも役立つことが多いです。
また、授業では、曖昧ではなくて、明示的に教えることが大切です。
このことは、特別な支援が必要な子に対しても良い支援になります。
授業UDを通して、理解力に優れる子が学び直しをしたり本質的な理解をしたりすることも少なくありません。
つまり、特別な支援が必要な子を含めた、すべての子の学び合いの追究には、通常学級の授業の質を、より一層向上させる可能性があると考えているのです。
実を言うと、授業UDとは、「授業の方法」レベルの工夫ではありません。
すべての教師が「発達障害可能性のある子を含めて、全員参加の授業をつくることが大切である」と、納得して了解できるような考え方、言わば、すべての教師が目指すべき「教育の哲学」だとも言えるでしょう。
この「日本授業UD学会」の設立の目的は、2つあります。
一つは授業UDに関する「知見の蓄積」です。
もう一つは、授業UDに関する知見を生かした「授業力の向上」です。
公開授業を参観しながら学び合う「授業UD研究全国大会」の開催、カリキュラムに基づいて授業力を積み上げていく「授業UDカレッジ」の開催、そして授業UDに関する知見を蓄積していく「学会誌『授業UD研究』」の発刊など、魅力ある様々な事業を通して、日本全国の教師たちが学び合える場にしたいと考えています。
また「日本授業UD学会」の「日本」という文言には、「国際」的な研究活動も視野に入れるという意味も込めています。
授業UDは、我が国だけではなく、国際的にも重要視されていく考え方だと思います。
授業UD研究が進展することによって、授業で「わかった!」「できた!」「次は~したい!」という声や笑顔が、日本全国の子どもたちから生まれることを心から願っています。
あなたも、授業UD研究について一緒に学び合いませんか。
すべては、子どもたちのために。
すべては、子どもたちの笑顔のために。
すべては、子どもたちの未来のために。
日本授業UD学会 理事長 桂 聖